何かを販売するなら個人でも「特定商取引法」を遵守しなければいけないのか

こんにちは。フリーランスのシェフです。

僕は普段、こうしてブログを書いたり、ココナラやランサーズでサービス提供したり、いろいろな手段で収益を得ているんですが、会社とかではなく普通の家で個人で活動しているため、匿名での活動が前提条件となっています。

で、これまでは特に何も問題なく活動できていたんですが、前から販売計画していたWordPressプラグイン(平たく言うとソフトウェア)、これをいよいよ販売するぞ!というタイミングである重大なことに気が付きました。

https://twitter.com/chef_moriawase/status/1211837959613251584?s=20

実は、WordPressプラグインに限った話ではなく、特定の商品やサービスを提供する場合、

  1. 名前(戸籍上の名前)
  2. 住所(部屋番号まですべて記載)
  3. 電話番号(確実に連絡がとれるもの)

の3つを販売ページに記載するか、省略しても開示請求があったらすぐに開示しなくてはいけないんですね。

※「なんでWoocommerceって住所を省略できないんだろう?」って不思議に思っていたのは内緒の話です。

自分でECサイトを立ち上げる場合は文字数の制限もないので省略できないし、省略したとしても開示請求に応えなければいけないなら意味ないな〜と。ちょっと残念でしたね。

ということで、ネットショッピングのような形式でWordPressプラグインを販売することは諦めたんですが、せっかくなので特定商取引法について理解を深めてみよう、逆にどうすれば匿名で販売できるのか見解を聞いてみようと、以下の2つの機関に相談してみました。

  1. 産業部消費経済課(048-600-0405)
  2. 日本産業協会(03-3256-3344)

日本産業協会の方が権威がありそうな印象を受けましたが、担当者が言うには産業部消費経済課の見解の方がより正確なようです。

あくまで僕が聞いた話なので、すべてにおいて正しいとは言えませんが、参考にしていただければと思います。

では、始めます。



まずは結論!

はい、忙しい人のための特定商取引法ということで、まずは結論を。

あれこれ違う角度で質問攻めしたんですが、端的に言うと、「価格や販売方法などの販売条件を明確に記載せずに、メールやSNSなどで個人的にやりとりをして、後払いでお金をもらう(先に商品やサービスを提供する)」場合は、個人情報の記載をしなくても良い、または開示請求があっても拒否できる、とのことです。

逆に言うと、これ以外のやり方でお金をもらって何かを提供する場合は、個人、個人事業主(フリーランス)、法人問わず、個人情報の記載または開示が必要になる…と。そういう話をされました。

(noteによる有料販売が流行っていますが、この理屈だとアウトな人が多いのでは?と、他人事ながら心配しています)

また、クラウドソーシングサービスのランサーズココナラにも同じく見解を聞いてみたんですが、ランサーズからは「個別案件しか答えることはできないが、個人情報を記載する義務はない」と返事があり、ココナラからも「(現時点での話ではあるが)個人情報を記載する必要はなく匿名でサービス提供が可能」と返事がありました。

つまり、手数料や評価など色々面倒な課題はありますが、匿名で何かを売る場合はパッケージ化されたものであってもクラウドソーシングサービスを利用するのが手っ取り早いと言えますね。

以下、詳しくお話しします。

「販売業者」の定義について

ネットでは、個人事業主じゃなければいいとか、利益が少なければいいとか、ECサイト形式じゃなければいいとか、色々情報がありますが、基本的には「利益を得ようと明確な意思を持って何かを提供する」場合は販売業者にあたるという見解とのことです。

例えば、みんな大好きnoteには特定商取引法に関する説明ページがありますが、月に100万円以上売り上げていないから大丈夫!…とはならないのが怖いところですよね。

それは上記の説明ページで参考ページとして触れているインターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドラインにも、「但し、これらを下回っていれば販売業者でないとは限らない。」との補足があるので、安心はできないのかなと。

あと、BASEやSTORES.jpでは特定商取引法についての記載が必要だけど、noteは大丈夫っていう理屈も苦しいのかなと思います。(※これに関しては後述)

特定商取引法の対象になるもの

先ほどの販売業者かどうかに通じる話になりますが、特定商取引法の対象になるものはけっこう幅広いです。というか、基本的には「全部」です。

例えば、自分の日常について書いているブログにパスワードをかけて、そのパスワードを100円で売る場合も特定商取引法に関する記載が必要になるという理屈です。

あと、会員サイトもそうですね。

月額100円でも月額980円でも、役務の提供(サービスを提供していること)とみなされるため、特定商取引法に関する記載が必要とのことです。

それを聞いて、(これ、まんまnoteやん…)と思いましたが、ノーコメントでフィニッシュです。

直接SNSやメールでサービス提供する場合

この段階で話がややこしくなってきて、担当者も露骨にイライラしていたんですが、くじけずに質問してきました。

次は、ECサイトという形式ではなく直接SNSやメールでサービス提供する場合についてです。

つまり、決済(購入)ボタンは用意せず、ただ単に商品やサービスについて案内するページを用意し、その後に個別にやりとり(決済の話など)すればどうか?ということです。

結論から言うと、これはダメでした。

というのも、特定商取引法にはいくつか項目があってですね、そもそも重要なポイントは特定商取引に関する法律の解説、第3節の通信販売の第11条なんですね。

ここに何が書いてあるのかと言うと、特定の商品(またはサービス)の販売条件(販売方法や価格)について広告する場合には特定商取引法に関する記載をしてくださいね〜ということなんです。

ここで言う「広告」には、チラシや新聞広告はもちろんのこと、DMメール(ダイレクトメール)やブログでの紹介なども該当します。

ですので、この条文によって匿名で何かを販売するのは原則無理だなと、ということになります。

ただ、この記載の中に「当該商品のイメージ広告等は、ここでいう通信販売広告には該当しない」という一文があってですね。

平たく言うと、バナー広告やテレビCMのように商品の機能や印象を伝えるだけの情報になるらしいんですが、これは対象外とのことです。

ですので、価格などの販売条件を一切記載せずに、商品の特徴を文章や画像で紹介するだけにして、気になる方はこちらまでご連絡くださいとメールアドレスやSNSの連絡先だけを記載、その後に「広告」ではなく、価格はこのくらいでどうでしょうか、メールで添付しますか、ダウンロードにしましょうか、と個人間でやりとりをすればOKという解釈ですね。

ただ、これがまたややこしい話になるんですが、上記の方法だと11条については大丈夫らしいんですが、今度は13条の方で引っかかるようで、どうやら前払いで一部(または全額)代金を受け取ってからサービス提供する場合は個人情報の記載が必要みたいなんですね。

見てみると、確かに、そういうことが記載されていました。

(ただ、すぐにサービス提供すれば通知(記載)しなくてもいいとも書いてあるんですよね…)

ですので、13条についても安心したい場合は、後払いにするのが正攻法になるかと思います。

決済手段はなんでもいいですが、できるだけ匿名化したいのであればPayPalが無難でしょうね。

バーチャルオフィスの住所でも問題ないのか

バーチャルオフィスの住所を使う場合は、注意書きが必要みたいな情報があって不安視していましたが、担当者には必要ないと言われました。

これは、第2節の訪問販売のページに「いわゆるレンタルオフィスやバーチャルオフィスであっても、現に活動している住所といえる限り、法の要請を満たすと考えられる(※)」の記載があるのですが、通信販売においても同じことが言えるようです。

(※ここでいう法の要請を満たすとは、住所として記載しても良いということです)

つまり、別にバーチャルオフィスの住所であっても、特段注意書きは必要ないとの見解です。

強いて言うと、日本産業協会の担当者からは「現に活動している住所なので、そこで実際に働いていない限りは現に活動している住所と言えない可能性もあるのでは?」とも言われ、その日本産業協会の担当者よりも権威があると言われた産業部消費経済課の担当者からは「バーチャルオフィスで実際に働くのはバーチャルオフィスの性質を考えると基本的にあり得ないし、郵送物の転送ができたり、受付窓口があって対応できるのだから、現に活動している住所と言えるはず」と言われました。

僕も後者の意見に賛成で、わざわざ「バーチャルオフィスでもOK」と記載があるのだから、それを住所として記載するのに何ら問題ないと思います。もちろん変な注意書きなしで。

バーチャルオフィスに関しては、別記事に詳しくまとめているので、興味があればぜひ。

記載する名前はひらがなやローマ字でもいいのか

連絡先はIP電話(050の番号)にして、住所はバーチャルオフィスの住所にすれば、残りの問題は名前だけですね。

まあ、よっぽど特徴的な名前でもない限り、名前くらいは別に公開してもいいとは思いますが、一応、「漢字以外の表記でもいいのか」と聞いてみましたが、普通にダメみたいです。

屋号はもちろん、ひらがな、ローマ字などに変換するのはダメで、戸籍上の名前を記載しなければいけないそうです。

※もちろん、そもそもの名前にひらがながある場合はOKです。

なぜココナラやランサーズは特定商取引法の記載が不要なのか

最後に、なぜココナラランサーズなどのクラウドソーシングサービスは特定商取引法の記載が不要なのかにも触れてみます。(個人的解釈も若干入ります)

大前提ですが、特定商取引法は消費者保護の法律ですよね。

つまり、「自分が消費者の場合に安心して購入できるのか」が理解のポイントになるかと思います。

逆に言うと、消費者が保護されていると言えるのならば販売元が匿名であっても問題ないと言えます。

ですので、冒頭でまとめた、「販売価格などのやりとりは個人間で、代金は後払い」の結論も理にかなっているのかなと。

あとは、文字通り「特定の商品の取引に関する法律」なので、提供するサービスが原則違うクラウドソーシングが特定商取引法の対象外でいいのも特に不思議ではありませんね。

そもそもクラウドソーシングは匿名ではなく、サービス会社には身元を明かしているため、何かトラブルがあった場合に責任を取る仕組みになっているのもポイントになるかと思います。

まあ、ココナラに関しては、はっきりと「特定商取引法の記載が不要」と言われているので、変に身構える必要もないでしょう。

記憶が正しければ、そもそも個人情報の記載を禁止していますからね。

まとめ

以上、相談内容のまとめでした。

冒頭でも言いましたが、あくまでも僕がそれぞれの機関の担当者から言われたことであって、担当者が変われば解釈が変わる可能性もあります。

ただ、「売上が少ないから販売業者じゃないし〜」というスタンスは割とブラックなスタンスにはなると思うので、その点だけは気をつけた方がいいのかなとは思います。

【続き】


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